Riko Shigefuji/重藤 理子
2022年12月のLFB RADIOのゲストにお越しいただいた、脚本家で放送作家のアサダアツシさん。放送後30年経った今でも熱狂的なファンを持つフジテレビの子供番組『ウゴウゴルーガ』で放送作家デビューし、以後数々の番組を担当されていらっしゃいます。そして、アサダさん脚本の新作映画『そばかす』が2022年12月16日に公開されたばかりなんです。ラジオにご出演いただいた後、インタビューにお付き合いいただき、アサダさんの活動についてお聞きしました。「vol.1はこちら」
――――12月16日に公開されたばかりの映画『そばかす』はどのような作品でしょうか。
アサダアツシさん:
「アロマティックアセクシャルといって、他者に対して恋愛の興味がないという属性をもった30歳の女性が主人公のお話になります。主人公は地方で暮らしていて、日曜日に家でゴロゴロしていると、親から『どこか出かけないの』とか、『恋人いないの』とか、『周りで結婚している人たちは大勢いるのに、そういう予定はないのか』とかどんどん言われるんですけど、元々恋愛に関心がない主人公なので、結婚なんて絶対に考えられないっていうところで生きているんです。ただ、周りにいくらそういう恋愛に関心がないって言っても、信用してもらえないという大前提があるんですね。その主人公がどうしたら自分の言っていることを信用してもらえるかとか、自分の幸せはどういう風にしたら掴んでいけるのかということを、描いた作品です」
――――アサダさんご自身が企画をして提案をされて制作されたとのことですが、どのようなプロセスがあったのでしょうか。
アサダアツシさん:
「この作品の前に、『his~恋するつもりなんてなかった~』というゲイのカップルを描いた作品を作り、評判が良かったんです。それでまた、hisみたいな作品を作ってもらえませんかというオファーがあった時に、これまであまりなかった恋愛に興味がない人を描いた作品をやりたいなと思って、企画をつくりました。
どんな作品も、誰かと誰かが出会って、そこで関係性が生まれるというのが物語の基本スタイルなんですけど、先程お話したように主人公が恋愛に関心がないので、出会う人との人間関係が結べなかったり、結べたとしても恋愛に発展しないので、物語が動いていかないという難しさがありましたね。どうやって、2時間話を作ればいいのかと、思いつくまでは凄く悩みました」
――――映画の内容や、主人公の感情だったりは、取材を進められていく中で出来上がっていったんでしょうか。
アサダアツシさん:
「取材をしていく中で、地方在住の20代、30代の人のお話を聞くことが多かったんです。東京だと大学を出て社会人になって働いていても、結婚というのはあまりプレッシャーとして親にかけられることはないけど、ある地方に住んでいる30代の女性に聞いたら、就職したら次のイベントは結婚しかないと親に言われたらしいんです。親としてはイベントとして娘を結婚させたいというのがあり、結婚したくないといっても通じないみたいなことがあって。取材を通して、『とにかく結婚しろ』と言われることは大変なんだなと思いましたね。
結婚しなくてもいいんじゃないかなと思っている方も大勢いると思うので、そういう方に観てもらえた時に、恋愛への考え方は間違っていないよ、と寄り添えるような映画にはなっていると思います。
あと、ちょうどクリスマス、年末、お正月と、ある種日本において恋愛のビックイベントみたいな感じが12月~1月にかけてあると思うんです。そんな時に、この『そばかす』が公開されるのは意味があることなのかな、と思いますね。一人で過ごす人もいると思うので、その方が観てくれた時に、これは自分の映画なんだと思ってもらえたら、すごく作ってよかったなと思います」
――――主演の三浦透子さんについて教えていただけますでしょうか。
アサダアツシさん:
「彼女(三浦透子さん)がいて、この映画が成立したなと思いますね。実は『そばかす』というお話を考えたのはいいけど、誰にやってもらえばいいのかと凄く悩んだところではあるんです。脚本を書いている時、普通だったらイメージキャストみたいな形で、この人にやってもらえたらいいな、というのがあるんですが、今回そういう人がいなかったんですね。
厳密にいうといたんですが、その方は役者さんではなくて、何となくイメージとしていたっていうだけで。それが、卓球の石川佳純さんなんですが。私が石川佳純さんの大ファンで、そこから『カスミ』という名前を主人公につけたんですよね。この話がもしかしたら、今回のビックトピックスかもしれないですね(笑)
脚本を書き終えたあと、昨年『ドライブ・マイ・カー』で、三浦透子さんが凄く良い演技をされていて、彼女にやってもらえたらな、と強い思いがあったんですけど、オファーも殺到しているし、出てもらえないんじゃないかなという思いもありました。ただ、ダメ元で聞いてもらったら、脚本を読んでもらえて、出てもらえることになって。『そばかす』の見どころと言われたら、三浦透子さんをまず見てもらいたいというのが一番大きな気持ちですかね。三浦透子さんも、すごく熱心にこの作品のキャラクターを掘り下げてくれて、いわゆる当事者の方にもインタビューをされていたりしたので、それが演技になって表れているなと思います」
――――ぜひ、アサダさんからこの記事をご覧になられている皆様にメッセージをお願いいたします。
アサダアツシさん:
「多分こんなこと自分しかやっていないな、とか、こんなことを分かってくれるのは自分しかいないな、と思うことって、誰にでもあると思うんですが、決してそんなことはなくて、絶対に自分のことを理解してくれる人がこの世の中に一人はいると思うんです。その人と出会うために、待っている時間が今。今を生きていたら、必ずそういう人に出会えるし、そういうチャンスは巡ってくるということを忘れないでほしいなと思いますね」
―――今回、田村ビルズグループのラジオにご出演いただきましたが、いかがでしたでしょうか。
アサダアツシさん:
「普通だったら緊張とかするんですけど、本番がすぐに始まったのもあって、特に緊張もなく、リラックスした状態で話すことができました。田村さんや岡野さん、枡田さんに、そういった雰囲気にしてもらいましたね。非常に心地よかったです。今回は公開収録だったので、お客さんもすごい温かい方たちで、やりやすかったです。ありがとうございました」
Epilogue
いかがでしたでしょうか。今回は、最新作映画『そばかす』の制作秘話や裏話など、大変貴重なお話を聞かせていただきました。『そばかす』は、お話の中で様々な悩みを持った方々が登場してくるので、誰が観ても自分は自分のままでいいんだと思えたり、人に寄り添えたりするきっかけになる映画だと感じます。皆さんにも是非見て頂きたいです。映画『そばかす』絶賛公開中です。アサダさんありがとうございました。
田村ビルズグループ 広報
重藤 理子 Riko Shigefuji
山口県宇部市生まれ。生まれも育ちも山口県で、音楽と地元への愛が強いです。地元の音楽フェスには学生の時から毎年参戦。2019年に新卒で田村ビルズに入社し、現在は広報として地元+九州へ田村ビルズグループ内の出来事を日々発信中。