対談「組織コンサルタントから、田村ビルズはどう見えているのか?」(前編)

今回社長の田村と対談するのは、組織コンサルタントとして様々な企業の経営や組織改革をサポートしてきた株式会社ブレスカンパニー代表の坂東さん。数多くの企業の組織の実態を見てきた坂東さんの目に、今の田村ビルズはどう映っているのでしょうか?

坂東 孝浩さん

株式会社ブレスカンパニー 代表取締役社長/手放す経営ラボラトリー所長早稲田大学卒業後、スタートアップから大企業まで、あらゆる組織課題の解決に携わってきた。その数800社以上。お会いした経営者は4000人を超える。
2011年に株式会社ブレスカンパニーを設立。そして2018年に手放す経営ラボラトリーを設立。
「管理しない経営」「誰もが意思決定できる組織」「給与は話し合って決める」「理念も事業計画もない」など最先端の組織や経営スタイルを研究。進化型組織のリサーチ数では日本屈指。
経営を進化させるプログラム「DXO(ディクソー)」を開発。全国の企業への導入支援を行っている。
また自社でも“手放す経営”を実践。勤怠管理やマネジメントを手放し、経営権も分散化するなど、身体を張った実証実験を行っている。
神奈川県出身、現在は福岡と横浜の二拠点生活。

対談完全版の動画はこちら!(全5回)

行き当たりばったりだったとしても、チャレンジしたから今がある。

田村:坂東さんとのお付き合いはもう16年になりますね。

坂東:そうですね。長いですね~。

田村:その年にはじめて新卒採用をやろうとしたんですがやり方が全くわからなくて。それで、坂東さんにコンサルをお願いしたんです。坂東さんから見て、16年前と比べてうちはどうですか?変わりましたか?あんまり変わってない……?

坂東:いや、ものすごく変化してますよ!当時なぜ新卒採用にチャレンジしたかというと、社員の平均年齢が非常に高かったからですよね。当時45歳で、このまま10年経ったら55歳になってしまう、と。

田村:そうそう。ただ、大卒の採用なんてやったことないし、うちの業界に大卒の子が来るとは思えなかった。でも、やらないと未来がないということでチャレンジの道を模索していました。

坂東:そのときから新卒採用をはじめて、今の平均年齢は何歳ですか?

田村:……30歳くらいですかね。

坂東:若返りましたね!あと、社名も「田村建材」から田村ビルズになっている。まるっきり変わったじゃないですか。組織が若返り、社員も3倍に増えて、業績も良くなった。そういう意味で見た目も大きく変わっていますが、私としては中身も大きく変化したなと思っていて。

田村:全然別の会社みたいな?

坂東:以前は売上の半分以上が建材事業だったと思いますが、今は何割でしたっけ?

田村:ないですね。ゼロです。

坂東:当時から「事業の入れ替えを進めたい」と話されていましたが、実はそのときはまるで現実味が感じられませんでした。社名にも『建材』って入ってましたし、その事業が無くなるなんて想像もつかなかった。

田村:あのときは、新卒を採用したところで配属する先がなかったんですよ。どこも人が足りていましたし。だから、苦し紛れに経営企画室というものをつくって、新卒の仕事を生み出すために新規事業を考えた。それが不動産事業でした。

坂東:かなり非常識ですね(笑)

田村:ですよね。しかも、新規事業で不動産をやると意思決定をしたのは、新卒採用の面接が3次選考くらいまで進んでいたタイミング。選考途中で「君たちには不動産をやってもらいたい」と伝えていました。もうめちゃくちゃですよね。

坂東:今だったらできないですか?

田村:絶対やらないです。そんな計画性のない経営はダメダメですね。

坂東:でも、あそこでチャレンジしたからこそ今がある。

田村:やっていることはでたらめなんですけど、あのときはあれで精いっぱいだったんですよね、今思えば。

普遍的に変わらないものと、時流に合わせて変えるもの。

坂東:私は手放す経営ラボラトリーという新しい経営スタイルや組織のリサーチをしています。そこで、ユニークな会社や経営者の方にたくさんお会いする機会があるんですが、田村社長は盛和塾で経営を学ばれて、フィロソフィを中心にした王道の経営をしていますよね。その経営手法を時代にどうアジャストしていくのか。あるいは合わせずに貫いていくのか。その辺りを聞いてみたいです。

田村:王道かどうかは別にして、普遍的なものってあると思うんです。それが、うちの場合は社是であり、経営理念。これは、僕を含む今の経営層がいる限りはずっと変わらずに続いていくと思います。一方で、経営というものは『時流適応業』だと思っていて。

坂東:時流適応業?

田村:そうです。事業も組織も時流に合わせて適応させていくという考え方。生真面目に組織論なんかを勉強しちゃうと「組織はこうあるべきだ」と捉われてしまいがちなんですが、本来そのときどきで最適な組織の在り方って変わっていくはずなんですよ。例えば、今のコロナ禍では求められる組織のかたちが以前とは変わっている。

坂東:なるほど。今はどんな風に対応しているんですか?

田村:例えば、朝礼の在り方も変えました。以前は全員一律同じ時間に顔を合わせることにこだわっていたんですが、今考えたらバカみたいだな、と。朝の時間は出られない人もいるので、今はお昼にやっています。小さいことですけど、そういうことはどんどん変えていく。

坂東:組織も生き物ですから。しなやかに変化していくことがすごく大事だと私も思います。

田村:今うちはアメーバ経営を取り入れていますが、アメーバって自分たちが生存するために、くっついたり離れたり、大きくなったり小さくなったりを繰り返しているんですよね。それって会社組織に置き換えてみても、非常に理に適っている。例えば、期初に決めた組織を1年間継続する必要なんて全然ないんです。期の途中で事業部がくっついたり離れたり、増えたり無くなったりしてもかまわないと思っています。

坂東:でもそこには、評価や人事制度も紐づいてきますよね。

田村:当然そうです。だからこそ、人事制度も含めて時流に適応できるように変えていくべきなんです。

フィロソフィが、柔軟な時流適応の肝になる。

坂東:私はこれまで「勤務形態が完全自由」とか「事業計画も理念もない。上司も部下もない」といったユニークな会社をたくさんリサーチしてきましたが、そういう会社が例外なく大事にしているのが管理会計なんです。一見ゆるい経営をしているように見えて、事業部採算制でB/S、P/Lをしっかり管理するということを当たり前にやっている。

田村:柔軟に変化して伸びている会社は、たいてい管理会計がしっかりしているということ?

坂東:そうなんですよ、社員にも会計のことを勉強させていたり。それがあって初めて柔軟性が保てるという考え方なんですよね。一般的な会社が売上計画や事業計画を1年の途中で簡単に変えられないのは、先ほど田村社長も言っていたように人事制度と紐づいているから。途中で「この計画は無しにしよう」と言ったとき「じゃあ評価はどうなるんだ?」と必ずなるんです。

田村:当然そうなりますよね。

坂東:だから、新しいタイプの組織は「事業計画」という言い方をあまりせずに、「シミュレーション」という言い方をしていますね。3か月とか半年後の利益の着地予想を1円単位で見える化していて、そこをしっかり管理しているから余白の部分には柔軟性を持たせることができている。

田村:なるほど。

坂東:私は、田村社長も同じようにやっているなと感じたんですよね。ベースとなる仕組みや考え方がしっかりとあって、時代や状況に応じて変えていく部分はどんどん変えている。

田村:先ほどの管理会計の話や時流適応の話も、肝になるのはフィロソフィだと思うんです。

坂東:やっぱりそうなんですね。

田村:管理会計をしっかりやると言っても、運用するのは結局人間なわけですよ。ガバナンスをどうコントロールするのかが重要で、そのとき肝になるのがフィロソフィなんです。「人としてどうあるべきか」という原理原則から積み上げていった価値観で、ガバナンスを効かせながら管理会計のシステムを回していく。変化適応も同様です。人間って本来変化を嫌う生き物じゃないですか。

坂東:そうですね。本能的に安定を求める。
田村:そこであえて変化に向かっていくためには、なぜ変わらなければならないかを腹の底から理解することが必要で、そのためには「自分は何のために働くのか」「自分の人生は何のためにあるのか」というところまで深堀りしていかないといけない。だからこそやっぱり、経営の根幹にはフィロソフィがあるんだと、今改めて心から思っています。

(後編に続く)

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