山口県立大学学長 田中マキ子さんに聞く。

Riko Shigefuji/重藤 理子


2023年2月のLFB RADIOのゲストにお越しいただいた、山口県立大学学長の田中マキ子さん。1996年から山口県立大学看護学部に着任し、老年看護をテーマにした教育と研究に従事され、その後看護栄養学部長や地域共生センター所長、副学長などを経て、2022年に学長に就任されました。ラジオにご出演いただいた後、インタビューにお付き合いいただき、田中さんの活動についてお聞きしました。


山口県立大学の特色

――――学長を務められる山口県立大学は、どんな大学なのか特色を教えて頂けますでしょうか。

田中マキ子さん:
「山口県立大学は、山口県唯一の『県立大学』として、4つの理念を掲げています。人間性の尊重、生活者の視点の重視、地域社会との共生、国際化への対応ということで、地域の要望に応えることができる『地域貢献型大学』として、県民の方の健康や文化の分野で専門的教育と研究を行って、優れた人材や研究成果を還元して、地域の方々から高い評価を得られるような大学を目指しています」




――――学長として、どのような思いで大学運営をされていらっしゃいますか?

田中マキ子さん:
「私が学長になろうと思った時に、『創造する力』を磨くことをお願いしようと思いました。創造する力というのは、AIにもできないことができる、可能性に満ちた力だと思っています。創造する力というと、抽象的に思われるかもしれませんが、まずは感じる力を持ち、そして好奇心を持って、観察して、洞察して、質問して、またその洞察を深めていき、調査し分析することで、やっと発見できるという、総合的な力・融合する力だと思います。創造する力を磨く、あるいは創造する力が磨かれるように学生さんにも教職員にもお願いしています。そこを教育方針にたてて、創造する力を磨ける大学としてやっていきたいなと思い、今動いています。


なかなか難しいことなんですが、やはり目標を持てないと、努力することも意識することもできないと思うので、『創造する力』というのを強調していますね」


田中学長の活動について

――――学長になられる前は、副学長として「地域共生センター」のセンター長の役につかれていましたが、どのような活動をされていたのでしょうか。

田中マキ子さん:
「ちょうど私が副学長になった年に、『大地共創』というコンセプトがスタートしました。大地共創というのが、私たちがつくった造語だったので、まずは『大地共創とは』というところから皆さんにお伝えをしました。大学と地域が共に何かを作り上げるというもので、地域に根付いた大学を確立させるというのが、大地共創です。地域貢献活動をしっかりやっていこうというものでした。


その中にPBL(Prpblem based Learning)というものがあります。地域課題を発見して、それを解決するためにどうするのか、ということを考えるのですが、学生目線だけではなく、地域の方々や田村ビルズさんのような企業の方々と一緒にやっていきましょうという形をとっています。このように地域課題の発見に寄与する活動を中心に行うようになりましたね」


専門分野「老年看護」について

――――田中さんの専門分野は「老年看護」ですが、介護の現場や社会にはどんな課題が存在しているんでしょうか?

田中マキ子さん:
「山口県は全国トップクラスの高齢化率なので、山口県の介護や医療のあり方が全国の模範になるようなところにあるかと思います。なので、時代を先取りする、あるいは皆が幸せになるような医療、在宅ケアのあり方を考える必要がありますね。


私が注目しているのは、『寝たきり』とか、欧米だと『寝かせきり』と言われるものです。寝たきりで何が起こるのかというと、一つは『床ずれ』という傷ができてしまうことですね。その傷ができると、その傷を治すためのお世話をしないといけないんですが、寝たままでいると重力から受ける影響がなくなるので、筋肉がやせ細って、関節も固まっていくんですね。そうすると益々自分で体の向きを変えることができなくなってしまい、お世話をする側の労力も増え、介護疲れみたいなことにもなってくるんです。そういった悪循環を変えるために、寝ている本人も自分のことは自分でできるように努力し、お世話する側も最小労力で最大効果が生まれるように、そんなwin-winの関係が成り立つようなケアはないかな、と考えています。


一番端的な方法としては、体の向きを変えるというケアがあります。体の向きを変えないと、同じところが圧迫を受けて、血管が潰れてしまいます。血管が潰れると血液と栄養が運ばれなくなります。なので、圧迫されなければ良いということで、体の向きを変えることが重要ということが言われています。


ただ、向きを変えることは重労働にもなりますので、お布団の下からバスタオルを畳んで入れてあげてください。そうすると、勾配が生じますよね。勾配がつくと、押される部分が変わってきますし、血液の流れも変わってきます。押される部分を変えるだけで良いので、お布団の下からタオルを入れ、時間が経ったら、タオルを抜いて別のところに入れる。そのローテンションをするだけで、傷がつくられにくくなりますし、介護をする側もタオルの抜き差しだけで良いので、非常に簡単に済みます」



――――介護が必要になった場合、家族はどう向き合えばいいんでしょうか。

田中マキ子さん:
「本当に長期戦になるんですね。保育と介護って対比されるところがあるんですが、保育って今から育っていくところにかかる労力なので、希望があるし変化があるんですよね。介護っていうのは、終わっていく視点なのでポジティブになれないところがあるんです。それで長期化しますし、最期を迎える責任というものもあるので、喜びを見出しづらくなると思うんです。だからこそ、楽に楽しくできるようにしていかないといけないと思うんです。家族の中でも親戚を交えてチームを組むとか、社会サービスとして使えるものはどんどん使えば良いと思います。医療機関とか、社会福祉事業団とか、そういったところとお話をされて、できるだけ抱え込まないように、孤立しないようにしていくべきだと思います」


最後にメッセージ

――――最後になりますが、記事をご覧になられている皆さんへ応援メッセージをお願いいたします。

田中マキ子さん:
「『Every cloud has a silver lining』どの雲にも金の裏地が付いているという訳で、曇り空でも、その裏側は太陽に照らされて輝いているという意味です。イギリスの詩人の言葉なんですが、辛いことや上手くいかないことがあっても、すぐ後ろには素晴らしい世界が待っているということだと思うので、どんな時でも希望を持って、明るく過ごしていきましょう!ということを皆さんにお伝えしたいです」



――――今回、ラジオに出演されていかがでしたでしょうか。

田中マキ子さん:
「楽しく話せてよかったです。大学のことを伝えたかったのと、私が医療の関係なので、地域の医療のあり方を変えたいという思いを伝えられたかなと思います。ありがとうございました」



Epilogue


いかがでしたでしょうか。在宅介護が主流になっていく中では、住まい(住宅)がより重要になってきますので、健康に良く、介護がしやすい住まいを目指していきたいと改めて思いました。田村ビルズはPBLでも、パートナー企業として山口県立大学の皆様と一緒に活動させていただいています。PBLについても改めてお伝えしたいと思います。田中学長、ありがとうございました。

山口県立大学ホームページ




作者プロフィール

田村ビルズグループ 広報
重藤 理子 Riko Shigefuji
山口県宇部市生まれ。生まれも育ちも山口県で、音楽と地元への愛が強いです。地元の音楽フェスには学生の時から毎年参戦。2019年に新卒で田村ビルズに入社し、現在は広報として地元+九州へ田村ビルズグループ内の出来事を日々発信中。

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